『着物憑き』

何となく恐ろしいようなタイトルですね。

これは昨年の秋に発行された、加門七海さんのエッセイのタイトルです。

新聞に紹介記事が載っていたのを読んで面白そうだと思い、図書館から借りて読んでいるところです。

 

加門七海さんは日本古来の呪術・風水・民俗学などに造詣が深く

それらをベースにした小説やエッセイをたくさん書いていらっしゃるようです。

この本もそんな内容の本で、本の帯に

「着物は選ぶものではない。着物が人を選ぶのだ。

 糸に布に織りにーーー入り組んだ情念を身にまとうとき、怪しい気配が立ちのぼる。

 着物をめぐる十一の談。」

とこれまた怪しい感じです。

読んでみると内容はそんなに怖くはなくて、東西の着物の好みの違いなど、着物に興味がある人やこれから着物を着てみたいと思っている人にもオススメ出来る本です。

この本にも書かれていますが、着物には何か「想い」が付いていくようですよ。

ここからは決して恐ろしい話ではありませんが・・・

今こちらに着付けを習いに来ていらっしゃる生徒さんが、練習用にご自分の着物をお持ちになりました。

「若い頃の着物なんですが・・・」とお持ちになったその着物は、優しい色の着物でした。

聞くと結婚する頃にお母様が見立ててお仕度して下さったもので、

ご主人が初めてご自宅を訪問された日に、お母様が着せて下さったのだそうです。

八掛にまで地紋が入ったそのお着物を見ていると、お嫁に出す娘へのお母様の深い愛情が感じられてきます。

 

このお母様は着物が大好きな方でしたが、最近はちょっと記憶力が衰えていらしたのだとか。

それでも「着付けを習いに行くの」と話すと、とても喜ばれたとのこと。私も嬉しくなりました。

若い頃に誂えた着物でも、帯を変えればまだ着ることが出来そうです。

是非着物を着られるようになって、その着物でお母様に会いに行ってねと話しています。

 

ところで、この着物についてはご主人もよく覚えていらつしゃるそうですよ。

「こんなに素敵な人が自分のお嫁さんになる!」って思ったのかも知れませんね。

この着物を着て是非お二人でお出掛けに!

ご主人もきっと嬉しいと思います。