きおろし きもの教室                            ブログ


「きもの知識」の授業

こちらに時々登場する、きものカルチャー研究所の人気授業「きもの知識」。

実際に反物に触れながら、着物の染織技術やその手触りなどを体験・勉強していただく授業です。

こちらの教室に反物は在庫していないので、「きもの知識」の授業は恵比寿本校で行いますが

昨日は初等科に在学中の生徒さんと勉強に行きました。

 

授業では、まず訪問着に使われている様々な染織技術から見ていただきました。

京友禅と加賀友禅の違い、京友禅に施された刺繡や金彩・・・

「刺繍にも色々なやり方があるんですね」。

 

紬などの織りの着物では、大島紬や結城紬、塩沢紬などを手に取り、

雑誌などの写真を見ただけではよくわからない”反物の手触り”も感じていただきました。「大島紬ってこんなに軽いんですね。結城紬は暖かそう。」

そして染めの着物。

江戸小紋を始めとして、いろいろな小紋の反物を広げて見ていただきました。

気に入ったものは鏡に当ててみます。「ステキ~♡」

 

この生徒さんは、初めての長襦袢のお仕立てを希望されていたので、

最後に長襦袢の反物も広げました。

自分のサイズに合った長襦袢を着ることが、着物をきれいに着るための第一歩。

反物の中から購入するものが決まり、校長先生にも立ち会っていただいて、お仕立てのために必要なサイズを測りました。

これで、ご自身にピッタリの「マイサイズ長襦袢」が仕上がります。

 

実は色々な反物を見ているうちに、私も好みの反物を発見!

ちょうど「これから着る夏の着物が欲しいワァ」と思っていました。淡い色の絽の小紋です。

鏡の前で合わせていたら、「先生の雰囲気にピッタリです!」と生徒さんに背中を押され、

私もお仕立てしてもらうことになりました。

 

生徒さんの長襦袢も、私の着物も、季節としては仕立て上がり次第直ぐに着られます。

二人で仕立て上がりを楽しみに待つことになりました~。

 

 

 

浜離宮恩賜庭園

今年の桜は当初の予想を外れて、例年に比べると随分と遅い開花になりました。

友人と会う予定にしていましたが、「ちょうど桜が見られるかもね」ということで、

今回は浜離宮恩賜庭園に行ってみることにしました。

 

浜離宮恩賜庭園は竹芝ふ頭近く、海に面した広大な敷地の徳川将軍家の庭園です。

最近何回かテレビで紹介されるのを見て、その景色の素晴らしさに、行ってみたいと思っていました。

最寄り駅は汐留ですが、新橋駅から汐留方面への地下通路が続いていて、

それほど時間はかからずに到着することが出来ます。

 

この日は朝まで雨でしたが、歩き始めるころに陽が差してきました。

私たちは大手門口から入りましたが、入ると直ぐに目に留まるのが「三百年の松」。

その素晴らしい枝振りに、皆が足をとめます。→

桜の開花はまだ始まったばかり。

園内のあちこちに、ほんの咲き始めのものから、満開の物まで、様々な桜が見られます。↙


↙園内にはたんぽぽ畑があって、辺りを黄色に染めていました。

目の前の菜の花に留まった鳥は、一心に葉をつぐんでいました。

 

 

 

それにしても外国から観光客が多いことにびっくり。

この日、園内の9割は外国からのツアー客のように見えました。入口には何台もの観光バスが並び、降りてくるのは皆外国からの高齢の(?)ツアー客。

園内に和菓子とお抹茶もセットがいただけるお茶屋もあるのですが、席はこの方々でいっぱい。

なんだか不思議な光景でした。

 

 

 


着物を仕立て直す

一緒にお茶を習っている友人から、

「お姑さんからいただいた絞りの着物を、羽織に仕立て直ししたいのだけど」と、相談を受けました。

私も仕立て直しをしたい着物と、仕立ててもらいたい白生地があったので、

一緒に和裁の先生の所へ伺うことにしました。

 

「絞り」いろいろ
「絞り」いろいろ

当日見せてもらった「絞りの着物」は、着物全体に絞りが入った

いわゆる「総絞り」の着物。

90歳を越えたお姑さんはもう着ないとのことで譲られたそうですが、

全体的に淡い色合いですが一色ではなくて、ところどころに別の色も入った、

とてもステキな着物でした。

これをいったんほどいて洗い、友人のサイズに合わせて羽織を仕立てることになりました。

念のため着物を着て行ったので、この機会に全体の寸法のチェックをしてもらい、

それから鏡の前に立って、羽織丈を決めました。

羽裏はどうしましょう?ということになりましたが、ちょうど在庫の中に淡いぼかしの優しい色合いの生地があり、

表生地との相性も良さそうで、ご本人も気に入られたので、こちらに決定。

ステキな羽織が出来そうです。

 

私の方は、仕立て直しと色無地お仕立ての相談です。

写真の左は紅花紬ですが、表地と裏地のそぐいが合わなくなってきてもう着る季節も終わるので、仕立て直しをお願しました。

袷の着物は表と裏の生地が異なるので、何年かすると生地の伸縮度合の違いから、どうしてもダブダブしてきます

このため、何年に一度かは着物をほどいて洗い、仕立て直しをお願いすることになります。

反物に戻して洗うことで反物は生き返りますし、サイズ直しがある場合や八掛を取り替えたい場合などは、この機会を利用します。

 

右の白生地はいただいたもので、ずっとしまってありました。このまま取っておいても仕方ないので、色無地が出来るかどうか相談に。

実は、私の着物を仕立てるには反物の長さが足りません。

 

それを、仕立て方を工夫することで出来るかどうか、

という相談です。

こちらは寸法についてもう少し厳密な見積もりが必要とのことで、お預けして検討していただくことになりました。

 

それにしても、着物の再生能力はすごいですね。

「大切に扱えば、仕立て替えをしながら世代を越えて

長く楽しめるわね」

友人と、そんな話をしながら帰ってきました。

 

 

 


三里塚記念公園

先日、成田空港の近くにある「三里塚記念公園」に行って来ました。

この公園について知ってはいましたが、実際に行ってみるのは初めてでした。

 

この辺りには江戸時代、江戸幕府によって佐倉牧という馬の放牧地がありました。

明治になって羊毛の需要が高まり、政府はアメリカ人牧羊家のアップジョーンズという人を雇って、ここに下総牧羊場を開場しましたが、その後牧羊事業は次第に縮小。

以降いろいろな経緯があって、明治22年に「宮内庁下総御料牧場」となりました。

 

「御料牧場」というのは、皇室で用いられる農産物を生産している農場のことです。

三里塚御料牧場は日本で唯一の宮廷牧場で、牧畜事業のほか畜産加工品も製造されていました。

また日本獣医学発祥の地ともされています。

資料館
資料館

昭和天皇・皇后両陛下がお越しになったり、海外からのお客様をお招きしての園遊会も行われたそうです。

資料館には、両陛下がお使いになった馬車も展示されています。

 

戦後、ここに成田国際空港が建設されることになり、御用牧場は栃木県に移転されました。現在その跡地に資料館が建ち、公園になっています。

貴賓館
貴賓館

敷地内には、きれいな茅葺屋根の建物「貴賓館」が建っています。

「貴賓館」は外見は茅葺ですが、当初内部は洋風だったとのこと。

なぜかというと、この建物は下総羊場の初代責任者として明治政府に雇われたアメリカ人アップジョーンズ氏の住まいだったからです。

 

氏の退職後は貴賓館として内部を改装、先述したように各国の大使を招待する園遊会の会場として、また皇族の方々の宿舎として使われたそうです。

防空壕入口
防空壕入口

とても静かできれいな公園ですが、驚いたのは敷地内に防空壕跡があること。

これは太平洋戦争当時の現・上皇様が皇太子だった頃、その身を守るために作られたものだそうで、地下に実際に降りてみることが出来ます(資料館に申請が必要)。

結局使われたことはなかったそうですが、説明を聞いていると、なんだか戦争が身近に感じられてしまいました。

 

 

 

 

 

着物を「着ること」と「着せること」

こちらの教室で中等科(他装を勉強)でお勉強されていた方が、

先日修了試験に無事合格されて、着付け講師一級の認定を受けられました。

中等科の修了試験の実技試験は「留袖を15分で着せる」。

中等科も終了するころには手際も良くなり、通常こちらも心配するようなことはありません。ほとんどの方が少し余裕をもって着せ終わり、残りの時間を手直しに充てることが出来ます。

 

中等科修了の際には、上記のような「人に着せる(他装)」試験と共に、

着物を着た自分自身を撮影して提出することも必要で、これを「認定写真」と言い、

今まで勉強してきたことを踏まえて、着物を着たご自身の「ベストポーズ」を写真に収めます。

これは自分で用意しても、写真館で撮っても、また各教室で撮影しても良いのですが、

いずれにしても、こちらは「自装の総まとめ」ということになります。

 

先述の生徒さんも、認定写真を提出されました。

着姿と共に、写る際の姿勢や表情などみな素晴らしいお写真で、

ご覧になった校長先生からお褒めの言葉をいただきました。

この方は中等科の過程が終了されたわけですが、

「もっと着物の勉強を続けたい」とおっしゃって、高等科へ進学されます。

自分で着ることも、人に着せることも、どれだけやっても終わりということはありませんから、私も一緒に勉強していくつもりです。

 

ところで話は変わりますが、今年の1月の成人式で振袖の着付けをさせていただいたかたからお便りが届きました。

着付け後にお願いしたアンケートが2ヶ月遅れで届いたものですが、最後に嬉しい言葉が書かれてありました。

「地元を離れて直前まで留学していた私にとって、成人式は少し憂鬱な行事でした。

 でもきれいに着物を着付けていただき、自信をもって参加することが出来ました。

 また機会がありましたら、よろしくお願いします」

着物がこの方の気持ちを明るくして、そっと背中を押してくれたのかもしれませんね。

着物を着ることで、楽しく成人式に出席されたご様子を嬉しく思います。