伝えられてゆく「きもの」

先日中等科の生徒さんの授業で、着付け用のボディに着物を着せているとき、こんなお話をしてくれました。

ご自宅で着せつけの練習をしていたら、お嬢さんが近づいてきて

「おかあさん、ちょっと着物を着せて。」と、おっしゃったそうです。

お嬢さんがお出掛けする前のほんの短い時間で、さっと一度着せて、お嬢さんはそのままお出掛けされたそうですが。

着せつけの勉強をされるお母さんの姿を、お嬢さんはどんな気持ちで見ていらしたのでしょう?

このお嬢さんが、いつか着物にもっと興味を持って、自分で着物を着てみたいと思ってくれたらとても嬉しいです。

 

もう一人、初等科に通われている生徒さんはまだ若いママで、お嬢さんは2歳。

お子さんがまだ小さいので、「着付けの練習は、子供が寝ている時」とおっしゃっていますが、生活の何処かに「ママは着物を着る」という空気(?)が漂っているのでしょう。

テレビに着物姿の人が映ると、

「ママ、きものー!」と教えてくれるのだそうです。

2歳とはいえ、2歳なりの理解で着物を見ているかと思うと、感慨深いお話です。

このお嬢さんも、いつの日か自分で着物を着てみたいと思うかもしれませんね。

 

もう一人の方が練習用にお持ちになっている着物が、おばあさま・おかあさまも着られていたという物で、ご自身が着ると三代に渡って着られたいうことになります。

大正ロマンを感じさせる柄で、今お召しになっても全く古さを感じません。「着物の柄ってすごい!」とお話ししながら、お勉強されています。

着物は大切に扱えば、このくらい長く着ることも出来ますよ。

 

私も父が着ていたアンサンブルの大島紬を仕立て替えて着ています。男物なので柄はありません。

大島紬は軽く足さばきも良いので、好きで大分着ています。

袷の季節が終わるとクリーニングに出しますが、最近になってお店の方から

「だいぶ柔らかくなりましたねえ」と言われるようになりました。

つまり、より着やすくなってきたのです。

この着物も、父の思い出と共に着ているのかも知れません。